トルコでの思い出をもうひとつね。
イスタンブールでのことなんだけど、
トルコ人の熱血正義漢ぶりを見せてもらったよ
イスタンに有名なプディング・ハウスっていう
安メシ屋があるんだけど、
ヒッピー風、コジキ風の貧乏旅行者で
いつも混んでるんだよ
そこがいわゆるひとつの(長嶋茂雄ふう)
情報交換場所になってるんだね。
でも、おれがそこに足しげく通ったのは
もっとべつのさもしい心根があったからで。。。
というのもさあ、
前にもちょっと言ったけど、トルコ人は日本人が大好きで
とにかく男からも女からもめちゃくちゃモテるんだよ
でね、そのプディング・ハウスに行くと、
まず、ビールを1杯だけたのむんだよ
そうするとさ、しばらくすると、まちがいなく、
トルコ人の誰かが話しかけてくるんだよね
おれが日本人だ、ってわかるともうよろこんじゃって、
あとは、
もう次から次へと、ビールはくるわ、料理はくるわで、
けっきょくおれが頼んだのは最初のビール1杯だけなのに、
満腹、泥酔じょうたいで、深夜のイスタンのまちを
千鳥足で歩ってかえる、というのが日課だったんだよね
さもしいね、ほんとに。
でね、そんなある夜のこと、
その日も
あるひじょうにまじめそうなトルコの兄ちゃん
ムスターファ(仮名、スルタン・アーメッド地区在住、
ムハマド・マハジュブ会計事務所勤務、
28歳、未婚、家族は母と妹2人、水虫あり)→(ぜんぶでたらめ)
としゃべりながら
ガツガツ、ガブガブと
飲食にはげんでいたんだけど、
(もちろんかれのおごり)
そのときプディング・ハウスには、
外国からの旅行者あいてに
ドラッグを売るウスギタナイおとこ
アマール・アブダル・アリ(37歳、無職、家族なし、
住所不定、幼少時に脱腸手術、性格:ひがみっぽい)全部でたらめだぎゃあ、
がいたんだわさ。(名古屋ベンふう)
で、このやろーが、旅行者のあいだを
あちこちのテーブルまわって、
ドラッグ売り歩ってたと思いねえ。
(江戸っ子ふう)
わたしの友人ムスターファ(仮名、28歳、以下略)は、
しばしこの男のことをにがにがしげに
にらんでいたが、
おもむろに立ち上がると、
アマール・アブのところへ
ツカツカと歩み寄ったかと思うと、
語気荒くなにやら一言二言言ったかと思う間もなく、
いきなり、
ビッタアァァァ~~~~ン! と
満員の店内に大音響とどろかせて、
アブのきたねえヒゲづらに
ものすげえビンタをくらわしたんだでごわすばい。
(よくわかんねえけど鹿児島ベンふう)
うすぎたないアブは、
「押忍ッ!
ありやとおやんしたっ!
もう1本お願いしやああすっ!」
などというわけもなく、(あたりめえだよ)
しかし、一言ももんく言うでもなく、
ぶんなぐられてはれあがった
ウスギタナイヒゲ面をおさえつつ
しょぼしょぼスゴスゴと
店外へと消え去ったのでありました。
騒々しかった店内はシーンと
しずまりかえり、、、
一瞬のちには、
拍手喝采、スタンディングオベーションの
あらしとなったのでありました
正義の英雄ムスターファ(28歳、水虫あり、以下略)は
おれのテーブルに帰ってくると、
ビールを一息で飲み干し、
(あれ?いま考えてみるとあいつイスラム教徒のくせに
サケのんでやがったな。。。)
「すごいね、つよいんだね」というオイラのほめことばに
ちょっとはずかしそうに、頬をそめたのでありました。
「う~~~~ん、すってっきっ!
ムスちゃん、おとこらしいっ!
もう、ロクデナシのハートをわしづかみよっ!
どうにでもしてっ!(されちゃちょっとこまるけどよ)」
すでにじゅうぶんメートルのあがっていたおれたちは、
そのあとは、さらにチョーシに乗りまくり、
周囲のトルコ男どももまきこんで、
はてしなく真実一路、
暴飲暴食阿鼻叫喚酒池肉林の一本道を
ひたすら突き進んでいったのでありました。
というわけで、
なかなかにシュールでアジワイ深い
トルコのよるだったの。
[1回]
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